鍛冶の会 鑿は難しい

鑿は難しい。

そう思ってはいるものの、これは共感を得ることのない、ほとんど独り言のような感想でもあります。

プロの鑿鍛冶はもちろん、そもそも素人鍛冶をしている人自体が極めてまれですから、私の苦労(同時に楽しみでもある)を共有できる相手がいないのは当然かもしれません。

とはいえ、鑿づくりはやはり楽しい。

上記のような工程を経て焼き入れに至るわけですが、鑿の難しさは 成形作業に尽きる と感じています。

日本人はシンメトリーの造形が苦手なのではないか、と密かに考えることがあります。日本の美には、あえて左右対称を崩すことを良しとする歴史的背景が多々ありますし、完璧を嫌うような感性がDNAに染み込んでいるのかもしれません。…という言い訳をしつつも、木材よりはるかに硬い鉄を削って左右対称に仕上げるのは本当に難しい。利き手や鑢の使い勝手が影響し、片側はうまくいっても反対側になると途端に思うようにいかない、ということがよくあります。

鉋刃が規格的な平面の集合体で構成されているのに対し、鑿は平面・ねじれを含む平面・曲線が入り乱れた立体構成です。

鑢は右手で保持し左手を添えて押し出すように使いますが、↰曲がりと↱曲がりでは削れ方が大きく異なります。そもそも鑢にも“目”がありますから、ここでは深入りしませんが、共感を得るのは難しそうなのでこの辺でやめておきます。

焼き入れ・焼き戻しの後は、前工程で生じた歪みを修正します。叩いて直すのですが、反りの修正は比較的容易でも、シャクミ(屈み)を直すのは難しく、刃金がピンと音を立てて割れるリスクがあります。鋼は鉋刃でいうウラ出し方向には耐えてくれますが、逆方向にはあっさり挫けてしまいます。

そこで鍛冶の会では、焼き入れ前に刃金をほんのり反らせておくという“保険”をかけています。焼き入れという工程終盤で刃金が割れるリスクを軽減するための工夫です。

ある程度ウラの当たりを確認したら研ぎの工程に入ります。

通常「研ぎ」といえば刃物の切れ味を回復させたり、刃欠けを修復したりする行為ですが、鍛冶作業を経て刃を付ける場合は、まず“黒刃”と呼ばれる、刃のまったくない状態から始まります。鑢で地金を削り落とし、刃の形をつくっていくのです。鋼は焼き入れで硬化していますから鑢が当たっても削れず、勢い余って地金を削りすぎてしまうこともあります。


最後に、前回作の鑿と今回作の比較です。

画像奥の鑿は、私が造ったものを腕も知識も信頼できる大工さんにプレゼントしたもの。一見よく似た鑿ですが、比べてみると今回作の方が首が太く、力強い印象があります。首の太さと形状をテーマに挑んだのですが、形状の方は改善が見られません。自分では改善しているつもりで成形しているのに、並べてみるとそうでもないという結果。

改めて、鑿は難しい。

そう思う庭竹でした。

世田谷の植木屋 『庭竹』

庭と植木の専門家、世田谷の植木屋 『庭竹』の紹介は上段メニューから,お庭の手入れや庭造り、リガーデンなど日々の業務は下記のブログでご覧下になれます。 一級造園技能士の技術とセンスで上質なサービスをお約束します。 次大夫掘民家園ボランティア『鍛冶の会』のお知らせもしています。 東京都世田谷区千歳台2-19-7 TEL03-3482-6510 niwatake_takeuchi@yahoo.co.jp