伝統的技術
世田谷の植木屋『庭竹』として日々仕事をしていると、時折、若い職人さんたちと接する機会があります。
20代、30代の職人さんたちは、私たちの世代が経験してきた庭の環境とは大きく異なる現場で育ってきました。そのため、古い仕事や伝統的なアプローチに触れる機会が少なく、「竹垣を組んだことがない」「差し丸太の使い方が分からない」といった声を耳にします。
一方で、クライミング系の新しい道具や安全装備についてはよく知っており、現代的な技術には明るい。時代の流れを感じる瞬間でもあります。
世田谷周辺でも、かつて“お屋敷”と呼ばれた広い敷地は代替わりとともに三分割され、売却されていくケースが増えました。私たちが修業時代に当たり前のように経験していた大きな庭は減り、竹垣が似合うような空間や、三脚が使えないような複雑な環境での仕事も少なくなっています。
植木屋といえば三脚が象徴のように語られますが、梯子もまた非常に有効な道具です。大正生まれの親方から教わった「道具は手段」という言葉は、今でも私の中で生き続けています。梯子は三脚より高所にアプローチでき、設置スペースも小さく、作業車に積んでも場所を取りません。
もちろん梯子には弱点もあります。足の幅が狭く不安定になりやすい点です。その弱点を補うために差し丸太や竹を支えとして使うのですが、若い職人さんたちは実際に使った経験がないためか、イメージしにくいようです。中には「逆にめんどくさくないですか」と言う人もいます。しかし、段取りが体に染みついた職人にとっては、むしろ“めんどくさくないからこそ”その方法を選んでいるのです。
竹垣や石組といった庭の基礎技術を経験したことがないという若手もいます。経験を積む場が減っているのは不遇とも言えますし、広い視点で見れば「運がない」とも言えるかもしれません。庭や竹垣は、遊びや趣味で自費をつぎ込んで作るものではありません。お客さまから依頼をいただき、責任を持って施工するからこそ技術が磨かれます。YouTubeで一夜漬けの知識を得ても、目の肥えたお客さまには到底通用しません。
私は現在、ボランティアという形で鍛冶作業にも携わっています。月島の江戸鍛冶三代目・左久作師匠から直接ご指導をいただける貴重な場です。鍛冶作業はまさに伝統技術そのもので、工程や作法、素材の扱い方の随所に秘伝や口伝が息づいています。確かな技術を身につけた者とそうでない者の作品には、驚くほど明確な差が生まれます。目の肥えた人が見れば、一目で分かるほどの違いです。
伝統技術は、ただ古いだけのものではありません。長い時間をかけて磨かれ、淘汰され、残ってきた“合理性の結晶”です。若い職人さんたちが新しい技術を身につけるのと同じように、古い技術にも触れ、学び、体で覚えていく機会がもっと増えてほしいと願っています。
そして私自身も、次の世代に伝えられるものを少しでも多く残していきたいと考えています。
以上、伝統とは何ぞやと考える庭竹でした。
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