植木屋と手道具
世田谷の植木屋『庭竹』です。
今回は手道具の話です。我々植木屋(庭師)は職人ですから手道具がなければ仕事になりません。各職人それぞれに贔屓の道具があって、それぞれにメンテナンスしては長く大切に使っています。
庭竹の手持ちの刈り込み挟みから「なごや」(廃業)30~40年位前(頂き物)、「定康」20年位前に購入,の2丁を植木屋目線ではなく、鍛冶屋目線(鍛冶会会員)で比べてみます。
鍛冶屋目線ですので刃味切れ味は除外です。
まずは座金、右の「定康」は規制品のいわゆるワッシャーのように見えますが、左「なごや」は厚みもありますし刃本体側から心棒頭側に向かってテーパーも取ってありますので造り出しているように見えます。(製作時代が違いますから、座金屋さんや口金屋さんなどが居た可能性もあります)
続いて口金です。共に規制品ではなく鍛接された自作の口金です。庭竹も経験がありますが,口金の鍛接は難しいです。短冊状にした地金をツルクビなどの治具を使って丸めて鍛接しますが、地金同士は付きにくいですし、鍛接の際叩きますので肉が痩せてしまいます。
右「定康」は味のある叩きっぱなしで鎚目が化粧になっています。
左「なごや」は手間をかけて成形してあります。ちなみに庭竹手持ちの「なごや」は2丁とも同じ口金の形状です。
次はコミと目釘です。
右「定康」は2本の目釘でコミは普通(長さ)です。
左「なごや」は1本の目釘でかなり深い位置に打ってあります。込コミの長さは長めです。これまでに見た刈り込み挟みの中では一番長いかもしれません。
続いて裏すきです。
下「定康」は裏すきが見て取れません。いわゆるベタに見えます。
上「なごや」は見た目で分かるほど裏がすいてあります。
最後は仕上げです。
右「定康」はグラインダーで仕上げたままのように見えますし、表には金肌も残した仕上げになっています。
左「なごや」は平も小端も裏もグラインダー成形のあと明らかに鑢やセンで整えてあります。
以上、同じような刈り込み挟みですが、鍛冶屋さんごとに品物に対する取り組みには違いがあるようです。ただ、造られた時代が違いますから一概には語れませんが丁寧な仕事には植木屋でも鍛冶屋さんでも好感が持てます。あなたの手道具はどうですか?
以上、趣味は鍛冶屋の植木屋『庭竹』でした。
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