鍛冶の会 不定期報告(刃紋)

鍛冶の会自称広報の庭竹です。

下画像は久作師匠からの宿題(錬鉄の中叩き鑿)の鑿です。焼き入れ前の予熱中です。

鍛冶の会のメンバーには色々な人がいます。そもそも鍛冶技術に興味のある人々ですから少し変わっているかも知れません。日頃から「砥石」「鉄」「刃物」「鍛冶屋」と言ったキーワードに反応するメンツですから、集まればあーでもないこーでもないと楽しそうにしゃべっています。

鍛冶技術においてもそれぞれ取り組んでいる対象が(大工道具、包丁、鎌、オブジェ、その他)違いますし、それぞれが技術的な失敗をします。その失敗はおしゃべりの中で共有されますし、共通の失敗には原因が明らかなケースも多く結果的に鍛冶の会全体の技術向上につながります。

庭竹は料理もするのですが、鍛冶屋の技術は料理の技術と共通する部分があります。上画像の通り加熱により素材を変質させる部分です。

料理にはレシピが存在しますが、10人が同じレシピで料理をしても全く同じ味にならないことは簡単に想像できます。原因は加熱による素材の変質です。素材に対する加熱スピードや特定温度帯の通過時間がレシピには表記できないからかと考えます。料理レシピにある強火中火はあまりにも抽象的と言ったら言い過ぎでしょうか。

さて、長い前置きは当記事の言い訳かも知れません。

鍛冶の会には刃紋に興味のある人間が庭竹の他にも数名います。

下画像は全鋼のペーパーナイフの焼き入れ前です。

素材は全鋼ですが詳細は不明です。錆びたタガネに似た工具を再利用しています、刃区あたりには立てに縮緬状の皺が多数、刃部には表裏共に長い割れがあります。

画像の状態はヤスリ等による成型の後、黒肌成型のために砥の粉を塗って焼き鈍ししました。その後素材表面の砥の粉を可能な限り洗い落として、任意の刃紋が現れるように砥の粉を塗布します。鉋や切り出し小刀では厚く塗ることはありませんが、今回はぽってりと置くように塗りました。

焼き入れ後ダイヤモンド砥石からキング#1000を(研ぎ進めればもう少し鮮明になるはず)さっと当てた所です。焼き入れ時に砥の粉が水を留めその他の肌は熱による気泡が焼き入れの邪魔をするので結果的に刃紋が形成されると考えますが、今回のようにペーパーナイフでは全体の質量が小さい為に素材の熱量と砥の粉による焼きの呼び水効果のバランスが悪いためか刃紋が大きくなってしまいました。

と言うのが今回のレポートですが、限りなく失敗に近い成果なので鍛冶の会では共有しています。

こちらは鍛冶の会のベテランによる玉鋼の本焼き包丁です。所謂刀の焼き入れに準じた形で土置きをして焼き入れしてあります。焼き入れ時はムチのようにうねって、刃部はかなり焼き割れしたそうですが刃紋は鮮明に現れています。ただ置いた土と刃紋の関係が正確には分からないとおっしゃっていました。

この包丁も庭竹のペーパーナイフも数をこなせばデータとして記録記憶できますが、当会は大量生産を目的とはしていませんし、ましてや刃紋の習得を目的ともしていませんので時々でのトライ&エラーを繰り返しています。営利団体ではありませんので時間がかかってもいいですし、失敗してもかまいません。

次大夫堀民家園(じだゆうぼり)に来られた方に鍛冶作業を見学していただき、当時(江戸末期~明治初期)の村における鍛冶屋の存在などを解説することが鍛冶の会の役割です。


世田谷の植木屋 『庭竹』

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